失った破片を、誰もが忘れてゆく。
──バロックという傷口以外は。
錆色の傷口を持つ僕たちは、
レコオドの針を落とし続ける。
現実という『今』の傍らで。

胸で結晶して行く現実と、
欠け、歪み続ける細胞の聲。
僕たちは耳を澄ますのだ、
不協和音に気づきながらも。
バロックに、気づきながらも。

なくした破片を、誰もが持っている。
日々生まれ変わる細胞のように。

僕たちはただ、聴いているのだ。
現実という『今』の傍らで。

ほら

また錆色の聲が聞こえる。



灰十字 ─ Cros Liath ─ 管理人、双星 "ミァハ" たかはる

20070514


Menuページへ行く